わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

諏訪哲史「アサッテの人」読了

 救われない奇人譚。行き詰まった小説という形式の新しい表現の提案でもあるのだろうが、書かれたそばから行き詰まってしまうのは、現代の文学という世界があまりに閉塞的だからなのか、それとも作者の狙い=作為なのか。作為の否定により作品としての全体像を失った作品は、やはり作中で描かれた、あらゆるコトバの作為の否定者=アサッテの人である伯父同様、どこかに消える運命にあるのか。
 文学の進化を停止させてしまうような、ネガティブなエネルギーに満ちた作品。読者としては、「アサッテ」の先にあるものを、ほんのわずかでもいいから見せてほしいのだが。もちろん、結論など不要。作者の考えだけでいい。現状のままでは、読者の読後感=想像力すらも全体像を失いどこかに消えてしまう。
 よく見る書評では「ポンパ」や「タポンテュー」といった奇妙なコトバにばかり焦点が当てられているようだが、そこを中心に読んだら本作はわからなくなると思う。もっとも、そこ以外を中心に読んでもそうなるのだが。迷作。