自分にすなおにならず、さんざん他人がいやがる愚行を繰り返していた主人公が、突如弱気になって「一人じゃ生きていけないんだよ」と叫ぶ。このセリフ、単に孤独がニンゲンを弱くするということだけではなく、先日の銃乱射事件だとか、もっと身近なところでは「いじめ」の問題だとか、そういった「個の暴走」「集団の暴走」に通じるゆがんだ心理について言及しているように思えてならない。ちょっと引用。
「人間もぼくも、一人じゃ生きていけないんだよ。だって、そうじゃないか。一人でいるということは最悪のことだよ。自分が世界から無視しつくされ、世界の無関心と沈黙の中に放置されているという現実ほど、過酷な現実はないんだ。誰か、自分以外の誰かの視線を受けることなしに生きていける人間はいないんだぜ。ほんとに、そんな人間はいないんだぜ。たにんのしせんによってのみ、そこに存在するんだよ。あるいは自分自身の視線によって、自分をそこに存在させるんだ。きみにはわかっているのか? わかっているのかよ?」