読む過程をこのブログで追ったりはしなかったが、実は毎日、ちょこちょこと読みつづけていた。
野良猫の保護、猫の疫病・伝染病、飼い主のモラル、そして猫以外のあらゆる動物の「命」と、様々な問題をエッセイというかたちで取り扱っている。妙なところで理屈っぽくなったり破綻した行動を冷静に描写して見せたりする町田節が炸裂しているおかげで前作『猫にかまけて』ほどの悲壮感はないのだが、それでも愛猫ゲンゾーの死のシーンには心打たれてしまう。
ゲンゾーの死は悲しいが、それでもペンを取らなければならない町田の生き方もまた悲しい。しかし、これはスピリチュアル的な考え方をすれば町田に課された使命なのであり、ゲンゾーとしては、自身の命と引き換えでも、より多くの飼い主が猫が感染しやすいウイルスという問題に関する知識をより豊富に、正しく持ち、それによってより多くの猫の命が救われるようになれば本望なのではないか。ニンゲンの不注意ゆえに猫の命が犠牲になった、と責めつづけるのはカンタンだ。そうではなく、そこから一歩前に進まなければいけないのではないか、と痛感した。町田は、死を書くことで一歩進んだ。
すべての猫飼い、必読の一冊。
- 作者: 町田康
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/10/19
- メディア: 単行本
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