わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

奥泉光『モーダルな事象 桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活』読了

 ラストまで読めば、なぜ「桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活」というサブタイトルが付いているのかがよくわかる。なぜなら、本作はミステリでありメタ・フィクション(という言葉をぼくは信用していないが)であると同時に、桑潟幸一という一人の文学者がそれまでの文学および物質的価値観を一切捨て、スタイリッシュな生活をはじめるに至ったのかを描いた純文学大作でもあるからだ。最終章で覚醒しながら放屁する桑幸の姿は滑稽でありながら大きな感動を呼び起こす。
『『吾輩は猫である』殺人事件』『新・地底旅行』『鳥類学者のファンタジア』とおなじ世界観で描かれているので、これらも読むことをお勧めします。四部作といったところか。四作中では、本作がいちばん読みやすく、かつお笑い色が強い。

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)

鳥類学者のファンタジア (集英社文庫)

『吾輩は猫である』殺人事件 (新潮文庫)

『吾輩は猫である』殺人事件 (新潮文庫)

新・地底旅行

新・地底旅行