「秋土用」。旧友の死、その間際の、些細ではあるが奇妙な行動、そしてその奇妙さをわずかに訝りつつも、その死をすなおに受け入れてあっけらかんと送る妻、深く知ろうとする素性不明の女、そして海外渡航中だったために、死の知らせを一月以上も遅れて知った主人公。語り手は変わらぬというのに、視点、あるいは着眼点が、語られる場面とともに、めまぐるしく変わる。それでいて、静かだ。饒舌な静かさ。死に潜む狂いのようなものを語ろうとするには、饒舌さと寡黙さ、両方が必要なのかもしれない。こんな芸当ができる小説家、現代では古井さんだけかもなあ。
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