第一章を黙々と。「森の家」に帰った長江古義人は、演劇集団「穴居人(ザ・ケイブ・マン)」主催の穴井氏と東京でも会ったことのあるウナイコのふたりと、古義人としては新作のために、そして穴井としては新作演劇のために、自作の再読と古義人の幼いころのハイヤーセルフあるいはイマジナリーフレンドみたいな存在である「コギー」に関するインタビューを進めて行く。
ちょっと読み方の面で混乱しはじめている。というのは、最近の大江作品に顕著なのだが、現実と虚構をごっちゃまぜにして作品世界を構築しているのだ。以前からその傾向はあったが、それでも過去に発表した自作のタイトルはよく似た別の表現に変更するなどの配慮がなされていた。ところが本作では、それがない。『万延元年のフットボール』『みずから我が涙をぬぐいたまう日』『M/Tと森のフシギの物語』『懐かしい年への手紙』と、現実と同一のタイトルが作中に現れ、おまけにそれが随所で引用されている。いずれも読んでいるが、自分の過去の読書経験をベースに読みすすめたほうがいいのか、それともそれは無視して読むべきなのか。
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