初期短篇集『殉教|微笑』より。第二章、上の階級に対する尊敬のような感情が、ものすごい勢いでねじくれていく。その過程は描かれていない。階級を示す襟章への主人公の関心が、唐突に奇妙な行動を引き起こす。不条理きわまりなく狂気じみてさえいるのだが、読みすすれば読みすすめるほどに、その狂気が必然のものであり、いや正気とさえ思えてしまう。

- 作者: 小島信夫,千石英世
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/12/03
- メディア: 文庫
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