「群像」一月号より。ほんの少し奇妙で神秘的、そしてわずかに波乱に満ちたチョコレート工場に勤める男の家族の数十年の歴史が、迷走しながらも淡々と、感情移入されることなく、そしてさしたる感動的なエピソードも挟まれることなく、展開されていく。正直言って、作品世界は把握しにくく、テーマも掴めない。いや、そんなものはないのかもしれない。だが、なぜだろう、最後の一行を読んだとき、マルケスの『百年の孤独』を読了したときととよく似た感動に包まれた。映画やドラマ、舞台では決して得られることのない、文学にしかできない感動。
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/12/07
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