最新連作短篇集。連載は「群像」。大幅な加筆訂正はされていないようなので、連載時に読んでいたものの読み直し、ということになる。
「除夜」。追い込まれた年の瀬というシチュエーションのなか、匂いを媒介に男女の関係を描いている。近年の緊張感が異様に高まりあの世に片足突っ込んだり無理やり突入してあの世からこちらを覗き込んだり……といった趣のある(もちろんだがオカルトというわけではない)、文学的に高みに登りつめすぎてもうどうしようかしらこれ以上の上はないぞ、というような作品とは打って変わって、状況設定は非常に厳しく沈鬱としているというのに、妙に明るく、呑気で、角が取れて柔かになった印象がある。
- 作者: 古井由吉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/10/28
- メディア: 単行本
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