「群像」12月号掲載。本作が、短篇小説特集号の巻頭を飾っている。三木卓を読むのは初めてかもしれない。
五十八歳で心臓バイパス手術を受け、そのまま生きつづけている七十七歳の語り手が、病院の勧めで海外の最新技術によるカテーテルを使った人工弁の埋め込み(?)を受けることになる。なのにタイトルが「咳」。
生と死の間で苦しむのではなく、なんとなく受け入れがたい死を諦めるように受け入れようとしつつも生に向かって惰性でしがみつく主人公のもやっとした自我が、柔らかいが丁寧に描かれている。このもやっとした自我、実は案外手強い。
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/11/07
- メディア: 雑誌
- この商品を含むブログ (9件) を見る