わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

三木卓「咳」

「群像」12月号掲載。本作が、短篇小説特集号の巻頭を飾っている。三木卓を読むのは初めてかもしれない。
 五十八歳で心臓バイパス手術を受け、そのまま生きつづけている七十七歳の語り手が、病院の勧めで海外の最新技術によるカテーテルを使った人工弁の埋め込み(?)を受けることになる。なのにタイトルが「咳」。
 生と死の間で苦しむのではなく、なんとなく受け入れがたい死を諦めるように受け入れようとしつつも生に向かって惰性でしがみつく主人公のもやっとした自我が、柔らかいが丁寧に描かれている。このもやっとした自我、実は案外手強い。

群像 2012年 12月号 [雑誌]

群像 2012年 12月号 [雑誌]

三木卓の作品はこちら。そうか、『震える舌』か。読んでないけど。『K』はちょっと話題になったね。