「群像」2015年8月号掲載の短篇。近未来なのだろうか、舞台は消滅がささやかれる東京。主人公は生まれつき動物のように顔(全身?)が毛に覆われている女性。それゆえの孤独を抱えながらも、かろうじて自我を、誇りを、守りながら、必死に、しかし一方で時代に流されるように、孤独とうまくつき合いながら、生きている。この、まじめさとけなげさ。絶望的でありながらも、わずかな希望を、ごく自然に感じつづけられる態度。しかし、この女性を見守っていたい、と思った途端に作品は、絶望的なカットアウトを迎えてしまう。
短い枚数で、とんでもなく深い悲しみ、希望、そして絶望を複雑に織り交ぜながら描き切った傑作だと思う。