結局、主人公と、彼が記憶を共有できるJ、彼にコンタクトしてきた外人EとM、そして主人公がJ同様記憶を覗くことができる新興宗教の教祖Sが精神を覗くことのできる元信者の早乙女(あー、ややこし)、は主人公が暮らす街・札幌で合流し、ともに主人公の出張先である岩手に行くのだが…岩手と言えば、東日本大震災の被災地だ…。
実験性が高いのに物語性が強く、エンタメ小説的に楽しめる。手法と物語、両方を同時に楽しむつもりで読みすすめると、非常におもしろい作品。そのおもしろさの背後に、ちょっとした厭世観がちらほらと。しかしこの厭世観も、大きな波に飲み込まれ、そして小さな希望の中に紛れていく。