わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

小説

松浦寿輝「香港陥落」

「群像」2020年9月号掲載。特集「戦争への想像力」の小説。 次第に見えてくる、三人の香港での暮らしぶり。戦争の足音が忍び寄ることで、緊張する部分と、つくろう部分と、変わらない部分と。油断するとたちまち壊れそうなバランスで成り立つ、表層的だが、…

松浦寿輝「香港陥落」

「群像」2020年9月号掲載。特集「戦争への想像力」の小説。 1941年11月8日、香港のレストランでの、日本人、イギリス人、そして中国人の会話。開戦前の退廃的な呑気さと緊張の同居した不思議なアンバランスさが、巧みに描かれている。 群像 2020年 09 月号 […

ルシア・ベルリン/岸本佐知子訳『掃除婦のための手引き書』

「星と聖人」読了。ちょっとつげ義春の私小説的な作品に似ていると思った。「義男の青春」などのラストと、深い部分でつながっているような。 表題作、読了。世の中との接点としての職業。自己確認としての職業。語り手でもある主人公が夫を亡くしているとい…

ルシア・ベルリン/岸本佐知子訳『掃除婦のための手引き書』

「ドクター H. A. モイニハン」。ラストが狂気じみていて、おまけにグロテスク。だが、読むのをやめられない。中毒的な魅力。 「星と聖人」。ひねくれた少女時代。 掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集 作者:ルシア・ベルリン 発売日: 2019/07/09…

『掃除婦のための手引き書』を読みはじめる

五時四十分起床。朝のうちは雨だったがいつの間にか止み、その後は時折青空も見えた。 仕事。午前中は月末の事務処理。大慌てで銀行へ。個人の口座に定期預金が残っていたことに気づいた。どうしよう。 午後はZoomで打ち合わせを済ませてから作業。複数の案…

筒井康隆「ジャックポット」

「新潮」2020年8月号掲載。 読了。「たられば」の世界が悪ふざけの渦のなかで突然現実味を帯びてくる。だが、作者はそれを畏れない。最後はSF作家としての矜恃と敬意なのだろうか、ハインライン礼讃で幕を閉じる。なるほど、だからこのタイトルなのか。 新潮…

筒井康隆「ジャックポット」

「新潮」2020年8月号掲載。 第一章読了。危機的状況は笑い飛ばす。案外、そんな姿勢にこそ希望は宿る。ま、今回の危機では大声で笑っちゃいけないけどね。 第二章はこのままコロナ禍が進んだらの世界。ちゃかし、いじり、悪ふざけ。筒井さんの真骨頂ですな。…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(26)

「群像」 2020年8月号掲載。 今月分読了。場面は変わり、丕出子さんと野球好きな父親との会話。今度は謎めいたお客について語りあうのではなく、父親のモノの考え方や記憶を軸に、遠回りするように、そしてそのお客、すなわち阿見さんのことをササッとかすめ…

ポール・オースター/柴田元幸訳『ガラスの街』

時間があるときにだけ少し、という断片的な読み方になっているが…。探偵と間違えられて依頼を受けてしまった作家クインは、遂行中に尾行相手を見失い、依頼主とまったく連絡が取れなくなり、ただただニューヨークの街をさまよいつづける。そこで目にする数々…

筒井康隆「ジャックポット」

「新潮」2020年8月号掲載。まだほんの少ししか読んでいないのだが……これ、筒井版『フィネガンズ・ウェイク』? 新型コロナウイルス、徹底した言葉遊び、そして風刺。 新潮 2020年 08 月号 発売日: 2020/07/07 メディア: 雑誌 パプリカ (新潮文庫) 作者:康隆,…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(26)

「群像」 2020年8月号掲載。食堂の料理人である笛田さんとその妻。会話の中に現れる、何者なのかわからないお客さん。毎回おなじカレーを食べ、コーヒーの回数券を利用し、食堂では古い文庫本を静かに読みふけるその様子は大学の教授のようだ、しかしこのお…

保坂和志「鉄の胡蝶の歳月の記憶に夢に掘るか」(24)

「群像」 2020年8月号掲載分、読了。 以前は語り手が過去の記憶を思いつくままに辿っていったたり大きく離れてみたり…というインプロビゼーションみたいな流れが作品をかたちづくっていたが(実際は計算づくの可能性もあるけれど)、ここ数回は新型コロナ前…

保坂和志「鉄の胡蝶の歳月の記憶に夢に掘るか」(24)

「群像」 2020年8月号掲載。まだ全部は読めてない。そして、またタイトルが微妙に変わっている。 新型コロナウイルスの流行中に、やたらに外猫にエサをあげてしまうダメな元警官の老人が引っ越すことになる。その老人が住んでいた家の解体工事によって、猫た…

松田青子「斧語り」

「群像」 2020年8月号掲載の短篇。この作家の作品を読むのは初めてだと思う。 寺の住職だった祖父がしっかり手入れをして大切に使っていた斧を、祖父の遺言により譲り受けることになってしまった青年は、同棲する同性の恋人とベランダで古くなった家具を分解…

長野まゆみ「ゴッホの犬と耳とひまわり」(8)

「群像」 2020年8月号掲載。 語り手の「ぼく」、画家の母、食品関連の仕事をしているらしい妹、その夫で「ゴッホの家計簿」らしきものの翻訳を依頼した河島の孫(なのかな)の海一とランチを楽しんでいる。食卓に並んだ手づくりパンは「ゴッホの耳」と名づけ…

長嶋有「ゴジとサンペイ」

「群像」 2020年8月号掲載。緊急事態宣言中、オンラインゲーム仲間の二人の女性が初めて会うことになって待ち合わせ、公園で弁当を食べる。その後、彼女たちはホームセンターでスコップを買い、自称引き籠もりの片方の女性が飼っていた犬「ゴジ」を家の庭に…

猫とは面白い動物だ

睡眠障害か。ここ数週間、夜中に三度くらい起きている。直接的な原因はわかっている。暑さと水分の摂りすぎだ。就寝前にグビグビと水を飲み過ぎている。だからトイレで目が覚める。用を足してすっきりしたところですぐ眠ればいいのだが、また水を飲む。しか…

雨の日は会社に行かずに

今朝も五時四十分起床。雨足が比較的強かったので今日が回収日となっている古紙の資源ゴミを出すべきか迷ったが、区の規定によると雨でも出せる(というよりも普通に出してほしい)とのことなので、ひとまず気にせず出すことにした。リモートワークが普及し…

いしいしんじ「息のかたち」

「群像」2020年8月号掲載。夏の短篇特集。ある高校生が小学生が投げた金属バットが側頭部に当たったのがきっかけで、人の息が見えるようになる。予想どおり、ストーリーは新型コロナウイルスのパンデミックへとつながっていく。 群像 2020年 08 月号 [雑誌] …

ポール・オースター/柴田元幸訳『ガラスの街』

新型コロナのためにかえって忙しくなってしまっていたためにしばらく読むのをストップしていたのだが、ここに来てまた読みはじめた。以前発売されていた別の人が訳した本作(確か『シティ・オブ・グラス』というタイトルになっていたと思う)を20年以上前に…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(28)

「群像」2020年7月号掲載。 戦死した父の形見の文庫本をゆっくりと、気になるところを手帳に書き写しながら読み進めるのを日課にしている初老の男性・阿見さんは、トラックのバックする時の音を聞いて父と戦争の記憶をよみがえらせる。だが、おそらくそれは…

「群像」2020年7月号まとめて(保坂和志、小田原のどか、樫村晴香)

群像 2020年 07 月号 [雑誌] 発売日: 2020/06/05 メディア: 雑誌 保坂和志「鉄の胡蝶は夢に記憶に歳月に掘るか(23)」。今回は新型コロナにまつわるエピソード、かと思いきや、最後のあたりでいきなり、まったく別の物語がはじまった。これ、次回につづくの…

リアルな感覚は確かにあったのだが、

梅雨冷えの夜。何度も目が覚めてしまい、これはアカン、とタオルケット一枚で寝るのを諦め、少しだけ綿の入った薄い布団を引っ張り出した。だが繰り返し起きていた理由はそれだけではない。小便だ。寝る前に水分を取り過ぎた。明け方はトイレに入っている夢…

長野まゆみ「ゴッホの犬と耳とひまわり」(7)

「群像」2020年7月号掲載。耳の形の料理にかぶりつく犬、そしてまた送られてきたゴッホに関する資料。一時期、外人部隊への入隊を検討していたという話は知らなかったな…。 群像 2020年 07 月号 [雑誌] 発売日: 2020/06/05 メディア: 雑誌 鉱石倶楽部 (文春…

Aマッソとリービ英雄と

五時四十分起床。Aマッソの加納が夢に出てきた。アタマがフケだらけだったので注意した。 Aマッソ ネタやらかし 発売日: 2017/07/15 メディア: Prime Video 首の痛み、かなり和らいでいる。これなら普通に日常的な動作もできる、仕事にも支障がない。だが、…

リービ英雄「文字の高原」

「群像」2020年6月号掲載。だらだらと読み進めている。主人公と中国人の友人は、チベットを中古のブルーバードで延々と突き進む。「根無し草」のような感覚を「言葉」という側面から語る世界はリービ英雄ならではなのだけれど、なんとなく文体というか、作品…

リービ英雄「文字の高原」

「群像」2020年6月号掲載。リービ英雄の作品は久々。漢民族の友人の運転で、チベットを登っていく、リービ本人がモデルらしき主人公。淡々とした描写の中に、アイデンティティの揺らぎや言語感覚の輻輳といった不思議な感覚がちょこちょこと差し込まれていく…

堀江敏幸「二月のつぎに七月が」(27)

「群像」2020年6月号掲載。「いちば食堂」のふたりの鯖談義から今回ははじまる。体幹とバランス感覚をバナナで喩えるという不思議な話も気に入った。へんに気取らない自然体の文体。崩れているのではなく、品格と知性に満ちているのだが、それが表面に強く表…

保坂和志「鉄の胡蝶は記憶を夢に歳月に掘るか(22)」

「群像」2020年5月号掲載。1号あたりの掲載量がとにかく多いので、なかなか読み終わらないのだが… 猫たちの、そして人間の死を数多く見届けてきた語り手は、死の向こう側の世界を否定する人たちに反論するかのように、自分は肯定も否定もしない、と主張する…

保坂和志「鉄の胡蝶は記憶を夢に歳月に掘るか」(22)

「群像」2020年6月号掲載。先日、NHKの猫番組に保坂和志とこの作品に登場する「シロちゃん」が出演するドキュメンタリーを放送していた。現実とどこまでリンクしているのだろう。 猫の死の記憶が、次々と思い出されていく。『未明の闘争』のラストもこんな感…