主人公が少しずつ、オリエントの康の息子であるタケオから、中本の一統の血と徳川の毒味役の血が半分ずつ流れる毒味男に移行している。書いているうちに、こちらのほうが魅力的に感じたのかも。
そして『岬』『枯木灘』などで物語の舞台となり、『千年の愉楽』で神話的な世界にまで昇華された「路地」という空間が、本作では地理的にも神話的にも崩壊してしまっている。『日輪の翼』では崩壊から新たな物語がはじまったが、本作では崩壊したという事実が熊野という土地に古い垢みたいにこびりついている。
千年の愉楽 (河出文庫―BUNGEI Collection)
- 作者: 中上健次
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1992/10
- メディア: 文庫
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