「群像」2018年5月号掲載。老画家と脱サラ50代小説家、ふたりの芸術論。内容はタイトルの通り、「わからないことに価値がある」そして「芸術に寓話的解釈は不要」ということに尽き、感動至上主義的な風潮が強まりつつある現代の美術や文学の世界に釘を刺している。そこはもう激しく共感。小説も絵画も、わかるものは面白くない。推理小説を読むのとは違う意味で、ぼくは常に、芸術作品から「問い」を感じつづけていたいから。
ただ、一方で社会における芸術の役割、芸術の社会参加、のようなことを考えると、答えがたちまち見えなくなってくる。(多様な)美という価値、芸術という存在が、個々の扱うテーマを飛び越えたところで、大きく、あるいは深層的に、社会に働きかける力を持っているということは、絶対に無視できない。しかし、そこを意識した作品は絶対につまらない。あるいは、押しつけがましくて、暑苦しい。
こういった問いも抱きつづけること。芸術には、そういう役割もあるのかな。