「新潮」八月号掲載。泣きわめく子どもが菩薩の仮の姿、という昔の物語からゆるやかに作品ははじまり、時鳥の声にまつわる思い出、記憶から、少しずつ若いころから壮年期にかけて経験した、鳥の鳴き声、そして音自体、あるいは聞こえるはずのない音、に、冷静になる自分や振り回されかける自分、の姿が、描き出されてゆく。幽玄なる映像に、妙にクリアな音の響きの感覚が重なってゆく。この奇妙なずれこそが、老いということなのだろうか。時には視覚と聴覚の立場が逆転することもあるのだろう……。
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/07/06
- メディア: 雑誌
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