「群像」11月号掲載。隔月で掲載されている連作短篇の六作目。気まぐれで激しい降り方のつづいた今年の梅雨の記憶から、二十数年前の高層ビルの上で赤ワインを飲みながら眺めた強い雨の記憶が呼び覚まされ、その場をともにした友人の、がんに倒れた母を毎日見舞いつづけた学生時代の経験のエピソードへと、一気に展開してゆく。ずぶ濡れになりながら病室を訪ねる若い活力をややもてあましぎみの息子と、意識が遠くなるたびに、一人の女としての側面とちらりちらりと見せる母の、艶やかではあるがどこか乾いた微かな感覚の対比が切なくも美しい。
四元さんの作品は、ちょっと気持ちが乗らなくなってきたのでしばらくお休みしてこちらを読みはじめた。古井さんは間違いなく現代最高峰の作家の一人だと思う。
古井由吉自撰作品 6 仮往生伝試文 (古井由吉自撰作品【全8巻】)
- 作者: 古井由吉
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/04/07
- メディア: 単行本
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