わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

小野正嗣『森のはずれで』

「片乳」読了。息子が連れてきた老婆はいつの間にか姿を消し、そして息子の記憶からも消えてしまう。老婆は、主人公の家で紅茶を飲みながら自分が戦時中に無理矢理休戦中の夫とまじわり子を身ごもったと告白した。その老婆が、消える。これは、「生」をつくり出したものの消滅・抹消? それとも、森に「帰った」のだとすれば、(胎内への)回帰? 一方、主人公の妻は二人目の子どもを身ごもり、今は実家に帰っている。ちょっと対比的。
 つづいて「古い皮の袋」。妊娠中の妻は国境を越える長距離列車で、携帯電話で「腹の中から出てくる前に子どもを殺すなんて」と大声で抗議しつづける大柄な女性と隣り合う。自宅では息子が、お腹の中のあかちゃんが、へその緒に絡まって出てこられなくなる」と鳴きわめいている。これまた対比。うーむ。