わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

角田光代『ロック母』

「ゆうべの神様」。意見が食い違うだの虫の居所が悪いだの、そういったレベルを超え、互いを憎しみあうほどの激しい夫婦喧嘩を繰り返す両親。どうやらその原因は父親の浮気にあるらしい。喧嘩するたびに茶碗が割れ、家は荒れる。大学受験を控えた主人公マリコは緑色のスパイキーヘアをした男子高校生ガンジと学校をさぼったり、病院の跡地でセックスしたり、ストリートスライダースの音楽を聴いたり(懐かしいねえ。本作の初出は92年11月)、万引きしたりを繰り返す。鬱積する不満? それとも。ちょっと引用。

 黙って自分の食器を洗った。子供の頃使っていた茶碗がどんなものだったか、小学生の頃、中学生の頃、いや去年使った茶碗の模様すら思い出せない。すべてあの二人の手によって壊され、どこかに消えて行った。私は自分の手の中にある濡れた茶碗を見る。ひよことにわとりが笑っている安物の茶碗も、またきっと消えて行く。彼等によって消される前に、自分の手で壊してみようかと一瞬思う。しかし私はそれを荒いカゴの中にそっと戻した。