わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

高見順『死の淵より』

 病床で記したとされる晩期詩集。死を予感した上で書かれたと思われるのだが、その鮮烈な言葉の力には圧倒される。死が呼び起こすエネルギー、というか。覚悟があるからこそ書ける境地というか。何篇か立ち読みして、ショックを受けっぱなし。その中でも、一番気に入った作品「死の扉」を全文引用。

いつ見てもしまっていた枝折り戸が草ぼうぼう
 のなかに開かれている 屍臭がする

 目にするもの、耳にするもの、周囲に存在するあらゆる存在が、死を予感させる。というより、死にメガネとでも言おうか、この世にあるものをすべて死のメタファーにしてしまうメガネをかけて、生きている。そんな感じなのだ。ある種の狂気なのだと思う。だがこの狂気こそが人間を人間たらしめているのだ……たいして読み込んでいないのに、そう痛感した。通読すると、印象変わるかな。

死の淵より (講談社文芸文庫)

死の淵より (講談社文芸文庫)