病床で記したとされる晩期詩集。死を予感した上で書かれたと思われるのだが、その鮮烈な言葉の力には圧倒される。死が呼び起こすエネルギー、というか。覚悟があるからこそ書ける境地というか。何篇か立ち読みして、ショックを受けっぱなし。その中でも、一番気に入った作品「死の扉」を全文引用。
いつ見てもしまっていた枝折り戸が草ぼうぼう
のなかに開かれている 屍臭がする
目にするもの、耳にするもの、周囲に存在するあらゆる存在が、死を予感させる。というより、死にメガネとでも言おうか、この世にあるものをすべて死のメタファーにしてしまうメガネをかけて、生きている。そんな感じなのだ。ある種の狂気なのだと思う。だがこの狂気こそが人間を人間たらしめているのだ……たいして読み込んでいないのに、そう痛感した。通読すると、印象変わるかな。
- 作者: 高見順,佐々木幹郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/02/04
- メディア: 文庫
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