「しのさん」。好きだった娘が結核になり、その死を、惚れていた主人公を含む三人の男が看取る、という話。
「亀さんの夕焼け」。父の会社の従業員(なのかな)で元人力、亀さんが老いてしまったのが悲しい、という話。
読みすすめるうちに、行間から「孤立」という言葉が浮かんでくる。孤独ではない。なぜなら、周囲にいる人間たちは、その孤立した者を積極的に自分たちの輪、関係性の中に迎え入れようとしているからだ。だが、されたほうはガンコにそれを拒む。意識して輪から外れるのだ。とげとげしい感情にとらわれながら。
派手なおもしろさはないのだが、自分と(というよりは、自分が関心をもっていること、とか、かつて強く感じていたこと)と波長がとても合う……ような気がした。
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