吉田修一の代表作『悪人』の挿絵を担当したアーティストの個展。挿絵の展示のほかは、手書きのドローイングをコンピューターでアニメ化した作品をメインに据えたインスタレーションが中心。不安から生まれたのであろう、他者とのコミュニケーションをできるかぎり拒否しようという意思が強い作品ばかりが並ぶ。生活に密着した視覚対象を植物的に捉え、それらを有機的あるいは強引につなげてしまった作品は、作者が新しい(彼女にとって鬱陶しくない)コミュニケーションのあり方を模索しているからこそ生まれたのではないか、と思ってしまった。住居を横側から断裁し、その空間を次々と見せていくアニメーションは、空間やそこに設置された生活の道具たちの破壊の過程なのかな、とぼくは解釈した。壊すことではじめて、個々に独立した存在だったものが結びついてゆくような感覚。だが、結び付いたところでそこに意思の交通(疎通、じゃなくて交通、ね)はない。なぜなら、すでに破壊されているから……。とにかく、病んだことばかりを考えてしまいヒジョーに疲れてしまいました。アニメの手法やアニメを中心にしたインスタレーションとしての手法はユニークでとてもおもしろかったのだけれど、作品そのものを好きかと言われたら、うーん、ちょっとうなずけないなあ。
常設展は単に描かれた時代や作者の国籍などによってではなく、明確なテーマのもとで展示されていた。たとえば「自画像」とか。見せ方は非常におもしろかったのだが、気に入った作品はひとつもありませんでした。なんでだろ。束芋で疲れちゃって、感動する心がなくなりかけていたかな。
※作品、あえて画像を貼りません。気になる人はリンクを辿ってください。
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