わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉『やすらい花』

瓦礫の陰に」読了。三つのエピソードから成っている。瓦礫の陰で交わった男女。それから約三十年後くらいだろうか、空襲の際に物陰で男女が交わることもあったというようなことを語る、首をケガした入院中の老人と足を骨折した四十代の男。さらに十年後くらい、バブル経済の時期らしいのだが、夜になると公園のベンチで毛布にくるまって寝る一人暮らしの老人の住むアパートの隣りの部屋に住む、夫と別れた四十代の女。首をケガした老人こそが瓦礫の陰で交わった男なのではないか、そして四十代の女はその男の子どもであり、老人はその男自身なのではないか、そう読めてしまうのだが、そうなのだという記述はどこにもない。物語の構造としておもしろいと思った。