わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

中上健次「荒神」

 短篇集『蛇淫』収録。孕み女を殺してしまった主人公「彼」の逃亡先での様子を丁寧に、しかし中上らしい荒々しい息遣いでつづっている。自ら嘘っぱちと暴力と欲にまみれた状況を生み出しつづけてしまうが、それでいて、時折気持ちが逃避する。優しさや気弱さ、繊細さが滲み出る。それを隠すように、男は嘘をつきながら温泉街をさまよいつづける。

蛇淫 (講談社文芸文庫)

蛇淫 (講談社文芸文庫)

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