「フィクション」。湯治場に泊まり込んで治療をつづける男の退屈な日常。男の妙な妄想が生活を侵食し、夢をも侵食していく。男を動かしているのはおそらく日々の生活や湯治場にいる他の人間たちに対する小さな嫌悪なのだが、その嫌悪は自分自身にも無意識のうちに向けられている。妄想は、そこから逃避するための方法の一つなのだろう。
傑作のひとつ『岸辺のない海』に文体がちょっと似ているような。
砂の粒/孤独な場所で 金井美恵子自選短篇集 (講談社文芸文庫)
- 作者: 金井美恵子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/10/11
- メディア: 文庫
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