わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

後藤明生『この人を見よ』

 谷崎の『鍵』における三角関係の話に戻るかと思いきや、はじめて描かれたシンポジウムの聴衆たちのヤジで、またもや迷走をはじめてしまう…。なんでチャーリー浜の「あーりませんか」が出てくるねん。

 内容を意図的に混乱させたり暴走させたり、という手法は、普通の作家だったらほとんど使わないのだろうけれど、後藤明生の場合は、むしろそこに書く歓びを覚えているようであり、読み手としても、そのメチャクチャっぷりが楽しかったりする。傑作『挟み撃ち』は、まさにそんな小説だった。おかしな部分で個人のアイデンティティが暴発し、おもいがけぬ物語展開や回想を引きだしていく。フリージャズみたいな感じかな。

 

この人を見よ

この人を見よ

 

後藤明生の作品はこちら。Kindleでどんどん旧作が復刻されている。

 

 

挾み撃ち (講談社文芸文庫)

挾み撃ち (講談社文芸文庫)

 
挟み撃ち 後藤明生・電子書籍コレクション

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