中上が晩年に「週刊ポスト」に連載していた小説だが、残念ながら未完。でもペーパーバックで単行本されたので、読む。
路地に生きた中本の血を継ぐ男たちの壮大な物語の一篇。『千年の愉楽』に登場し、ブラジルに渡ったたオリエントの康の子孫(たぶん息子)、タケオが主人公。ちんちんのでっかい色男だ。語り部だったオリュウノオバはまだ登場しない。ブラジルからオリュウに宝石を手渡すために来日したタケオはオカマの仲買人にその宝石を託し、前金として300万円を受け取り……。
昭和の新宿の場末の、しみったれた小便くさい雰囲気がぷんぷんの世界観。自分がそういうところで生きていけるかというとまったくもってアウトなわけだが、作品世界としては惹かれる。