「群像」2019年3月号掲載。
今回の語り手はエスキモーのナヌーク。ヒッチハイクでコペンハーゲンにいるSusanooに会いにいこうとするが、ラッキー(つまり他者からの親切)が重なり、あっという間に病院に着くことができた。そこで彼は、ムンンや性格最悪の精神科医ヘルマーと出会う。ヘルマーとナヌークは、なぜか気が合いそう。「言葉」という道具あるいはシステムと、人と人とのつながりが、二人の関係にどう絡んでいくのか、そして物語はどう進んでいくのか。今回を読んで、さらに楽しみになってきた。
それにしても。多和田葉子は細かな心理描写、心の一瞬の揺らぎ、浮かんで消えるうたかたのような感情や思考の描き方がすごくうまいと思う。半歩だけ不思議な世界にめり込んだような心理描写というか。