「3 晩年の詩」。寿命は、身体に、生活に、ゆるやかに、すこしずつ染み込むようにやって来る。染み渡ってしまえば、あとは記憶を振り返りながら、そして時折その再現と再生を試みたりするしかない。そこに安易な悲しみはない。著者が訳したマイヤーという十九世紀の詩人の「おさめた櫂」という作品を、引用。
おさめたわたしの櫂から水が滴り、
滴はゆっくりと深い水に落ちる。心を悩ませたものも、喜ばせたものも尽き、
苦しみのない今日が流れ落ちる。そしてわたしの下では、ああ、光の中から失せて、
わたしの生涯のより美しかった時たちがすでに夢を見ている。青い水底から昨日が呼びかける。
光の中には私の姉妹たちがまだ幾人も残っているのでしょうか、と。
さらにこの詩を紐解きながら、著者はこうも続けている。
無苦の一日とはいずれ至点であり回帰点であり、死と呼びかわす。