「6 鳴き出でよ」。グルウフィウスのソネット「人間の悲惨」。キリスト教的な世界観の中で書かれたにも関わらず、妙に無常的・仏教的な詩作もスゴイのだけれど、それ以上にこの章の書き出しがスゴイ。引用。
豚に真珠というところか。私などには所詮活かしようにもなかった知識を、若い頃にはあれこれ溜め込んだものだ。あんな無用のことどもを覚える閑があったのなら、今ごろはとうに失われた町の風景でも、もっとつくづく眺めておけばよかったのに、と後年になり悔やまれることもあったが、さらに年を重ねて、それらの知識もすっかり薄れた頃になり、その影ばかりに残ったものが、何かの機会に、頼りない足取りながら、少々の案内をしてくれる。
薄れて、はじめて活かせる知識。薄れなかったら、この「少々の案内」はどうなるのだろうか。ぎらぎらした知識に武装されたアタマで詩を鑑賞するのは無粋過ぎるかもしれない。著者はこのあとに詩作の和訳をつづけている。
「7 莫迦な」。ボードレールの「七人の老人」。作品の和訳引用はない。ぼくが読んでないせいもあり、なんだかピンとこなかったなあ。