わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

[読書日記]赤瀬川原平『背水の陣』

 原平さんが環境問題に文字通り「背水の陣」的な心境でのぞんだ、珍しく社会的な作品。ライカ愛用者らしく、古いものを使いつづけることが大切だと説くこの作品を読むと、エコロジーとは物質的な実践といよりも、心の問題なのだということが見えてくる。消費とは買い、使い、捨てるということだ。このサイクルを遅れさせることがエコロジーだとすれば、遅れさせるためにはモノへの愛が不可欠となる。ところが、資本主義はモノへの愛を肯定し礼賛する一方で、それを否定する一面が強い。企業の理屈で言えば、自社の新商品は愛してほしいが、他社の商品は愛してほしくないのだ。愛がなければ、容易に捨てられる。原平さんは、環境問題は地球への愛が半分、あと半分は人間自身に返ってくる部分だとも書いている。環境問題は日常問題なのだ。日常生活の中に、どれくらい愛を注げる道具があるか。エコロジーとは、まずはそこからはじまるのではないか。
 環境は守らなければならない。そうとは頭でわかっていても多くのひとが(ぼく自身も含めて)なかなか実践できないのは、エコロジーは地球という、なにやら大きな、実感しにくい存在についてのものだという思い込みのためではないか。頭で地球は愛すべき故郷の星、などと考えていても、地球以外の星に行ったことがないぼくらには、それを心で実感するのは難しい。だが、エコロジーが自分自身の問題、日常の問題だということは容易に実感できる。まずは、モノを愛してみよう。そんなことを考えながら読んだ。
 ところで、こんな法律 http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/ がまもなく施行されるのをご存知だろうか。中古売買という環境保護の有効手段を禁じ手にしてしまうような、先に書いたモノへの愛とはまるで逆行する法案であることにまず驚いてしまったが、それよりも、ビンテージ・ギターやアナログ・シンセサイザーなど古い電気・電子楽器が手に入れられなくなるため、多くのミュージシャンが困っているようだ。それを販売する業者もまた崖っぷちに立たされている。ご理解いただいた方は、Webで署名してみてはどうだろう。ぼくも署名しました。 http://www.jspa.gr.jp/pse/

背水の陣

背水の陣