「孫の土産に」。作家である主人公の柿原は、登山愛好老人の謎の遭難話に狂気を読み取る。そして物語(ってほど明確にスジがあるわけではないが)は、心臓病を患った旧友、奈倉との再会へ。
「好日」。奈倉の父の老いについて。
最近の古井さんは自身が老齢に達したせいか、「老い」を踏み台にするようにして、さらに一歩先へ、一段高いところへ、無謀にも(老人ってのは概して無茶するもんだ)飛び出そうとする、そんな作風になりつつあるが、本作では、老境に達する一歩前の視点から、老いによる行動の、精神の、そして人生そのものの「狂い」を、ただただ冷静に、見つめている。
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