わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

古井由吉『楽天記』

「孫の土産に」。作家である主人公の柿原は、登山愛好老人の謎の遭難話に狂気を読み取る。そして物語(ってほど明確にスジがあるわけではないが)は、心臓病を患った旧友、奈倉との再会へ。
「好日」。奈倉の父の老いについて。
 最近の古井さんは自身が老齢に達したせいか、「老い」を踏み台にするようにして、さらに一歩先へ、一段高いところへ、無謀にも(老人ってのは概して無茶するもんだ)飛び出そうとする、そんな作風になりつつあるが、本作では、老境に達する一歩前の視点から、老いによる行動の、精神の、そして人生そのものの「狂い」を、ただただ冷静に、見つめている。

楽天記 (新潮文庫)

楽天記 (新潮文庫)

杳子・妻隠(つまごみ) (新潮文庫)

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