古井由吉「牛の眼」 - わたしが猫に蹴っとばされる理由

　母への愛情が、ねじくれた形で、男たちの素行に、いや生き方に、表れる。その不器用さ。自らを鎖でがんじがらめにしているような、不自由な感覚がつきまとう。そのまま書けば武田鉄矢的かーちゃん愛になりかねぬテーマを、古井流に昇華した、ということなのだろうか。いや、そんなに浅くはないな。いや、武田鉄矢が浅いとは言っていません。ぼくの解釈の仕方が浅いということ。浅いというか、甘いというか。