わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

椎名麟三「深夜の酒宴」

 どうやら主人公は椎名本人がモデルらしい。戦中(かな?)に思想犯として受刑された経験のある青年の、戦後の極貧生活。思想的なことが延々とつづくようなことはなく、自分自身と周囲の貧しさが、ひたすら冷静に描かれているのだが、その描写が奇妙な文体(ちょっと埴谷雄高に似ている?)で、ゆらゆらと揺らいでいる感じ。抜け出したい気持ちがゆらぎを生んでいるのではなく、社会情勢に自分も周囲も振り回され、追いつめられ、その結果、足元が危うくなって、ゆらゆらしている。そんな感覚かな。

群像 2010年 04月号 [雑誌]

群像 2010年 04月号 [雑誌]

私の聖書物語 (中公文庫BIBLIO)

私の聖書物語 (中公文庫BIBLIO)

椎名麟三の作品はこちら。どの本に「深夜の酒宴」が掲載されているかはよくわかりません。おまけに、かなり入手困難な状況みたい……。