どうやら主人公は椎名本人がモデルらしい。戦中(かな?)に思想犯として受刑された経験のある青年の、戦後の極貧生活。思想的なことが延々とつづくようなことはなく、自分自身と周囲の貧しさが、ひたすら冷静に描かれているのだが、その描写が奇妙な文体(ちょっと埴谷雄高に似ている?)で、ゆらゆらと揺らいでいる感じ。抜け出したい気持ちがゆらぎを生んでいるのではなく、社会情勢に自分も周囲も振り回され、追いつめられ、その結果、足元が危うくなって、ゆらゆらしている。そんな感覚かな。
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