めまぐるしい三人称多元描写と文法を無視した自由奔放な文体から来る破綻した面白さが最近はやたらとフィーチャーされがちだけれど、改めて読んでみると戦後まもない頃の、個人としても国家としても情けないくらい不安定なアイデンティティの無様さが自虐的に露呈しているのがよくわかる。他愛もない内容であるにも関わらず、精神的な危機をさらっと語れてしまうという点においても、この作品はスゴイと思う。とまとめのようなことを書いてしまったが、まだ再読は読了していない。

- 作者: 小島信夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1967/06/27
- メディア: 文庫
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