「群像」2016年4月号掲載。
大江健三郎が若い頃に書いた「私小説ABC」を起点に、私小説に対する痛烈な批判が展開される。戦後の私小説の定形は志賀直哉によって確立されたとされるが、大江だけでなく、大岡昇平もが、私的なことを書くことの浅さ、「私」にこだわることのあやうさを主張する。島尾敏雄『死の棘』がボロクソに言われているのには驚いたが、確かに一理ある。作者はさらに、安吾や織田作の私小説批判も紹介。そこから、私小説に文学的な(それとも文学を超えたところでの?)可能性を見出そうとする。というところで今回はおしまい。
志賀直哉はほとんど読んでないなあ。本棚に文庫があるから読んだのだと思うが、さっぱり覚えていない。『死の棘』は、逆に読み返そうかな、とも思った。それから、大江健三郎。あの作風は私小説の超変形とも考えられるのだが。
佐々木敦の作品はこちら。実は、書籍は一冊も持っていないし読んでもいないです。