何度か葵が様子を見に来てくれたようだ。猫なりに、飼い主の心配をしているようだ。大丈夫。ひとまず回復には向かっている。元気になれば、おまえと追いかけっこもできるさ。
葵の気配のせいというわけではないが、何度も目が覚めたのは日中にひたすら寝ていたからだろう。五時、とうとうまったく眠れなくなった。まだ早いけど、と上半身だけ起き上がり、溜め込んだメールのチェックをしておく。熱を測る。うん、平熱だ。ノドの痛みもかなり落ち着いた。だが咳が出る。鼻水も出る。油断すればたちまちぶり返すのだろう。だが、仕事。
夕方、近所のクリニックへ。土日に発熱したことを伝えると、中国人との接触について聞かれ(ちょっと偏見的な気がしたが、まあ、仕方ないんだろうなあ)、していない、と答えると、今度はインフルエンザの検査をされた。先週一週間、このクリニックでのインフルエンザ患者はゼロだったそうだ。コロナウイルスを畏れてみんな予防を徹底しているかららしい。インフルは陰性。もともとインフルにならない体質のようなのだ、私は。生まれてこの方、罹患したことがない。別の薬を処方された。
夕方、愛用するiPhoneのランニングアプリが通知機能を通じて「走れば?」と提案してきた。おまえ、オレの今の体調をわかってねーな。ったく。しばらくランニングはお預け。せっかくシューズを新調したのに。
読書は工藤庸子「大江健三郎と「晩年の仕事」」(1)(「群像」2020年2月号掲載)。大江健三郎全集完結特集に掲載されていたこの方の大江論は、しなやかで、視点の移動と論理の展開がダイナミックで、 作家への愛情にもあふれていて、とてもすばらしかった。いいな、この人の大江論。と思っていたら、まさかの連載化。第1回は『取り替え子』。大江さんの義兄にあたる伊丹十三の自殺がテーマとなった作品(って書くのはすごく乱暴なのだが)。