わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

工藤庸子「大江健三郎と「晩年の仕事」」(5)『晩年様式集』十年後に読む「カタストロフィー小説」

「群像」2021年3月号掲載。この連載評論もいよいよ最後(なのかな)。大江さんが震災直後からリアルタイムに自分をモデルにしつづけながら二年以上にわたり「群像」で連載していた小説。この作品、それまでの大江健三郎の仕事をすべて否定しかねないような自己否定観、彦批判感の強い内容と、暴走老人ともとらえられてもしかたないほどの、当時の社会問題に対するアクティブな抗議行動、そしてその末の消耗…といった内容が、現実と虚構をおりまぜるようにしてつむがれているところがあまりに奇妙すぎて、とても不思議な気持ちになったのをよく覚えている。それを、後期大江作品については随一の読み手とも言える工藤さんが緻密に論じている。この作品は(本稿の中で工藤さんも書いているが)、全文章に異様なテンションが満ちていて、読んでいて気が抜けない。評論家としてこれに挑むのは大変な仕事だと思う。

 

 

群像 2021年 03 月号 [雑誌]

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  • 発売日: 2021/02/05
  • メディア: 雑誌
 

 

 

晩年様式集 (講談社文庫)

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晩年様式集 イン・レイト・スタイル

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大江健三郎全小説 第15巻 (大江健三郎 全小説)

大江健三郎全小説 第15巻 (大江健三郎 全小説)

 

 

 

女たちの声

女たちの声

  • 作者:工藤庸子
  • 発売日: 2019/06/17
  • メディア: 単行本