少しずつ時間は進んでいるようなのだが直線的な描き方は一切していないから混乱する。ぼくらが記憶をたどる時も、実際はこんな感じだよな。子どもの頃のことを時系列に思い出していくなんて、ぼくにはできない。めちゃくちゃな断片がたくさん出てくるだけだ。
昭和三十年代の子どもたちの無秩序な暴れっぷりを描いた部分、感情移入一切なしで冷静に描いている分だけものすごくリアルでおもしろくなっている。引用。
清人兄にくっついて行った算盤塾もすごかった、授業がはじまる前に子どもたちが教室じゅうで騒いで暴れてる、すべての算盤がジャカジャカジャカジャカ揺すられて音を出す、消しゴム、鉛筆、筆箱、何でも飛ぶ、教壇の脇の戸棚か箪笥の上に登ってる子もいる、一番ひどい子は天井をクモみたいに這っていた。
…笑うしかないよな。