「群像」2020年5月号掲載。冒頭の、芥川賞受賞作『杳子』の分析がすばらしい。それまでのいわゆる西洋的恋愛の世界観を破壊し、まったく新たな危うい視点を持ちこんだという考え方には賛同。だがぼくは、古井さんのすさまじさはいわゆる小説らしい初期の小説の中にではなく、それが壊れ、小説というジャンルで括ることに疑問を感じつつも、やはり「これは小説だ」と理解するしかない、そんな感覚に満ちた後期の(富岡さんはそれを『山躁賦』以降と考えている)作品が好きだ。
「群像」2020年5月号掲載。冒頭の、芥川賞受賞作『杳子』の分析がすばらしい。それまでのいわゆる西洋的恋愛の世界観を破壊し、まったく新たな危うい視点を持ちこんだという考え方には賛同。だがぼくは、古井さんのすさまじさはいわゆる小説らしい初期の小説の中にではなく、それが壊れ、小説というジャンルで括ることに疑問を感じつつも、やはり「これは小説だ」と理解するしかない、そんな感覚に満ちた後期の(富岡さんはそれを『山躁賦』以降と考えている)作品が好きだ。