連作完結。病に壊れた体をなんとか動かしながら、いつものように散歩し、仕事し、疲れや眠気とうまく付き合う。それがタイトルの「その日暮らし」。ここ数年、いくつもの連作を重ねながら作者は「老い」を書きつづけている。歳をとるという事実をを受け入れるように、というよりは、客観的に観察しながら、記憶と重奏させるようにして、描く。その重なりの向こう側から、奇妙な生命力が、力とは言いにくいのだが、やはり力と呼ぶしかない何かが、ひょっこりと顔を出す。読者はそれを、丹念に拾い上げるようにして、読む。そんな小説でした。