2006-06-09 古井由吉『聖耳』 読書日記 「知らぬ唄」。寝たきりの、息も細くなるほどに弱った老人の口から、ふと唄が漏れる。声は小さく、唄とはとても聞き取れない。だが、家人はみなそれが唄だと思う。どんな唄なのかに思いを馳せてみる。幾度か聞いたことがあるような気がするのは、唄が老人のタマシイそのものだったからだろうか。