わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

小野正嗣『森のはずれで』

「古い皮の袋」を読み終えたところで、残りを読むのをやめた。いや、正確には次の章(タイトル忘れた)を読みはじめてすぐのところで。この世によく似てはいるものの寓意に満ちた異世界に主人公と家族は生きていて、その異世界をさらに不思議かつより強い寓意に満ちた存在にさせているのが「森」、そして唯一、森から離れた場所にある「ショッピングセンター」だけが現実世界、そういう構図の作品なのかな、と思って読んでいた。概ね当たっているとは思うが、ところどころでこの構図がほころびているのがすごーく気になった。意図的なほころびなのだろうけれど、それが逆効果のようで、ぼくにとっては読みつづける意志を弱めさせてしまうのだ。作意に満ちた意図的な作意のなさ、というべきか、作意の裂け目というべきか。小野さん、アタマのいい方なんだから計算づくなんだろうけれど、こういうのって本能でやらないとうまくいかないと思う。