主人公の少女は、どうやら自分たちが美容室のマダムの家に預けられている理由が父の浮気にある、ということを知りショックを受ける。
語り手は小学生の少女だが、大人の言葉で描写されている。つまり、この作品は大人になったある女性が、小学生のころの出来事を回想しているということ。しかし、語り手は決して感傷的になったり当時のエピソードに極度な感情移入をしたりしない。分裂的とも思えるほどの客観性で、記憶をたどり、緻密に語りつづけている。この、語り手と文体・視点のギャップが本作の価値を決めているのかもしれない。