わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

東京都美術館「フィラデルフィア美術館展 印象派と20世紀の美術」

 印象派好きのぼくとしては見逃せないよなあ、と思いつつも強烈に惹かれる作品がなさそうで、かつスケジュールの問題もあってなかなか足を運べなかった。期待もすこしずつ薄れていたのだが、実際に鑑賞してみるとかなり見ごたえあり。印象派の巨匠の作品を一度に観るチャンスは意外と多いのだけれど(常設展でもそこそこ観られる)、感銘を受けるよりも欲求不満が募った状態で会場をあとにすることのほうが多いと思う。今回は…少なくとも欲求不満にはならない。
 ほか、キュビズム/エコール・ド・パリの系列、シュルレアリスム、現代アメリカ美術のコーナーがあった。キュビズムピカソがどれくらい多くの画家に影響を与えたか、影響を受けた画家たちがそれをどのように消化し花開かせたかが感覚的にわかって興味深かった。シュルレアリスムは、あまり好きではないのでちゃんと観てなかったかなあ。現代アメリカ美術も興味がないから流しちゃった。映画みたいなアングルの絵だなあ、と思ったらワイエスの作品だった。義弟ヨメのHちゃんがワイエスの大ファン。なるほどね。
 以下、魅力的だった作品。

  • エドゥアール・マネカルメンに扮したエミリー・アンブルの肖像」…対象はポーズをとっているだけなのに、動きが感じられる。静かなる躍動感は、荒々しいようで実は繊細なタッチから生まれているように思える。
  • カミーユピサロ「午後の陽光、ポン・ヌフ」…ピサロのほかの作品はみな点描でスーラの影響が濃いのだけれど、そのせいかどうか知らんがなんとなく絵が止まっている。この作品は点描ではなくいきいきとした筆のタッチで描かれていて、その結果、不思議な躍動感が生まれている。風景画なのにね。
  • クロード・モネ「アンディーブの朝」…大好きな画家のひとり。繊細なるダイナミズム、静寂から生まれる色彩の、静かなる爆発。背筋を伸ばして鑑賞したくなる。
  • クロード・モネ「睡蓮、日本の橋」…うわあ、色彩のビッグバンだよこりゃ。
  • ピエール・オーギュスト・ルノワール「ルグラン嬢の肖像」…ルノワールらしい肖像画。少女の柔らかな髪と肌の輝きが印象的。
  • ホアキンソローリャ「幼い両生類たち」…この画家、知らなかった。すごいタイトル。タッチは硬質なのに、子どもたちも海も躍動している。笑い声や波の音が聞こえてきそう。
  • パブロ・ピカソ「ヴァイオリンを持つ男」…キュビズムの傑作。対象の解体と再構築。スゲエ。圧倒された。
  • アルベール・クレーズ「バルコニーの男(モリノー博士の肖像)」…この画家も知らなかった。わかりやすく、まとまったキュビズムピカソのようなエネルギーの爆発はないし、対象の徹底的な解体にまでは至っていないのだけれど、絵としてまとまりがあると思った。遠近感がしっかりしているからかも。
  • マルセル・デュシャン「画家の父の肖像」…若いころの作品らしい。色彩感覚が不思議。印象派の画家には捉えることができなかった何かを、この絵ではしっかり表現できていると思った。その「何か」とは何なのか、よくわかんないんだけどさ。
  • アンリ・マティス「青いドレスの女」…ものすごい傑作。対象より背景のほうが色が濃かったり、遠近感めちゃくちゃ、すっごいデフォルメと、それまでの絵画の常識をぶっ壊しまくっている。マティスだと思わずに観ると、安斎水丸?かと。似てるよな。
  • ジョルジュ・ルオー「薔薇を持ったピエロ」…ルオーも大好きな画家。めずらしく、ピエロが微笑んでいるような。
  • パウル・クレー「魚の魔術」…幽玄的なおもちゃの世界、というか。初期の池田満寿夫を思い出した。池田の場合はエロだけど。
  • アメデオ・モディリアーニポーランドの女の肖像」…これまた歴史的傑作。首、凝ってるんですか?
  • マースデン・ハートリー「ニューメキシコの風景」…大地も木々も空も、ヘビかなにかの生き物のよう。うねる世界。
  • ジョージア・オキーフ「ピンクの地の上の2本のカラ・リリー」…清純さとエロスの同居。花ってそういう存在だよな。