わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

国立新美術館「異邦人たちのパリ1900-2005 ポンピドー・センター所蔵作品展」

 タイトルどおりの企画展。パリに集まった異国の芸術家たちの作品を、ある程度時系列に沿って展示している(それだけ?)。注目はフジタの「カフェにて」と、ピカソの一連の作品か。
 年代が進むに連れ、描き手の「美への欲求」が「表現への執着」へとどんどん変化していくように見えた。現代美術とは、一見スタイリッシュかつ難解なようだが、実は「オレはオレは」的な自己主張の上にのみ成り立っているのではないかと思ってしまった。少なくとも、20世紀初頭のアーティストたちは、美に奉仕したい気持ちがどこかにあったように感じられる。現代美術作家を突き動かしているのはは、奉仕ではなく新たな表現の発見(オレがやったんだ、というある種の達成感)であり、それが美しいかどうかは、おそらくは別問題であり、作家の「好み」なのだと思う。だから、時折まるで美しくない芸術作品というのが誕生してしまうのだ。この新しい流れをつくったのはピカソなのだと思うが、ピカソに、美に奉仕する心がなかったとはとても思えない。
 上記の「美」という単語は、「感動」と置き換えてもいいと思う。
 以下、気になった作品。

  • ピカソ「女の肖像」…キュビズムだが、極端なデフォルメがないぶん、女性の美しさが損なわれていない。バランス感覚がおもしろい。
  • ピカソ「青いトルコ帽の裸婦」…せめぎ合う内面。
  • ピカソ「青の女性」…「女の肖像」と対照的な作品。
  • レオナール・フジタ藤田嗣治)「カフェにて」…まあ、これは好きな作品ですからね。
  • シャガール「緑の自画像」…写実的なテーマであるはずなのに、まるで地に足がついていない。なんなんだ、この浮遊感、非現実感は。
  • シャガール「墓地の門」…躁状態の墓地。これまた写実的なテーマなのに…以下略。
  • ジャコメッティ「テーブル」…断ち切られた希望、止まっている時間。そんな感じ。
  • ヴィクトール・ブラウネル「狼テーブル」…この作家知らないんだけどさ。環境破壊や科学崇拝への警鐘? ホントは狼じゃなくてキツネを使っている。
  • エルンスト「フランスの庭園」…大地が持つ生命力とエロチシズム。