抜志さんは立川流Cコースに属する杉並の歯医者さん。並川歯科医院院長。ぼくのかかりつけの歯科医でもある。「玄人裸足」は抜志さんが長野の素人落語家ふたりとともに毎年行っている落語会なのだが、今回は談志師匠から「立川」の家号をいただけたということで、襲名披露興業となったのだが、なんで素人がそんなことするんだよ、っていうツッコミはナシで。シャレですから、と本人の弁。その割には、黒紋付作ったりと気合い入りまくり。ゲスト出演していた文都、左談次両師匠もそのへんをよーくわかっていらっしゃるようで。落語家とは幸せな職業だ、と痛感。
●「転失気」西正亭あたり……長野の素人芸人の親分みたいな人。素人だがかなりの実力派。外見とは裏腹に、噺は洒脱で軽妙。ネタは、屁の噺です。
●「犬の目」立川文都……文都師匠の高座ははじめてだったが、江戸落語なのだがところどころで出てくる大阪弁(師匠は大阪出身)が、なんの違和感もなく心地よく響く。談四楼師匠もそうだけど、とにかく噺のリズムが軽い。トントントン、と軽妙に流れ、ズドンと下げる。うまいなあ。目医者が患者に犬の目玉を移植(?)しちゃう噺。
●「真田小僧」快楽亭狂志……長野の小学校の先生、そしてかの快楽亭ブラック師匠の弟子(今もなのかは不明。快楽亭を名乗っているのはおそらくブラック師匠と狂志さんのふたりだけ)。硬調だが妙な波のある、不思議な落語を聞かせてくれる。ネタは、ずるがしこい子どもが親に小遣いをせびる噺。
●口上……ゆるーい襲名口上でした。文都師匠も左談次師匠もふざけまくってた。
仲入り
●「短命」立川左談次……師匠譲り(?)の無頼な落語家。怖そうな外見や素行とは裏腹に、枕もネタも軽妙で、どこか吹っ切れた感じがある。好きだなあ。美しい娘と結婚するとすぐにムラムラして好意に及んでしまうので短命になる、でもそれがブスだと……というエロ噺。
●「寝床/クリニック版」立川抜志……義太夫を聴かせたがる困ったダンナの噺を、落語を聞かせたがる病院の院長に置き換えて披露。抜志さんらしい半創作。師匠お二人を前に緊張したかな。個人的にはもっとはじけてほしかった。前半は、昨年亡くなった並川歯科医院先代追悼小噺でした。
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