わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

名字なしジャガイモ

 五時五十五分起床。梅雨冷えというやつだろうか。陽の昇らぬうちに何度も目覚めては、久々に感じる肌寒さに身を縮め、とうとう根をあげて毛布を一枚、押し入れから出した。前日より一枚多くかぶった状態で、雨は降っているのかと神経を研ぎ澄ませてみるが、まるでわからない。
 朝、宅急便が届く。伝票を見る。送り主は母だ。だが、送り主の氏名欄に書かれていたのは「きよこ」という名前だけで、名字がなかった。姓名逆転でカタカナ表記(名と姓のあいだは「・」すなわちナカグロ入り)というのは何度かあったが、とうとう名字がなくなってしまった。伝票を書いているのは筆跡から考えて明らかに父だ。あのジジイ、ウケを狙っているのか、それともめんどくさいのか…。宅急便、箱の中身はジャガイモだった。
 仕事。今日は若干進行がゆるやかだが、明日からはまた、業界で言うところの「巻き」ばかりが入るハードスケジュールが待っている。二十一世紀はスピードの時代だというが、スピードというのは乗れるか飲み込まれるか、あるいは傍観するかのいずれかで、お気楽なのは傍観なのだが、油断しすぎればたちまち飲み込まれてしまう。世の中の大半が、スピードスピードと口走りながら、自らその身をスピードに献げ、率先して飲み込まれようとしているように見えなくもない。スピードを乗りこなす人間も一部にはいるのだろうが、その表情は飲み込まれてあがく人間よりも一層険しく、切羽詰まっている。そう思える。
 終日、書斎にこもって作業した。何本か、新規の依頼。あまりに短期間なものはお断りした。自分のキャパシティをオーバーしているものも断るしかない。ほぼ二週間、取材による拘束があると条件を提示されたら、ほぼ一人で切り盛りしている身としては、もう断念する以外にない。
 夕食後、請求書を出すために郵便局へ。代理店から経理処理が間に合わないと言われ、速達にした。