わたしが猫に蹴っとばされる理由

文学・芸術・哲学・思想の読書&鑑賞日記が中心ですが、雑食系なのでいろいろ取り上げてます。猫もいるよ♡

片岡義男『短編を七つ、書いた順』読了

「7 グラッパをかなりかけます」。基本はおなじだがよく見ると違う二着の洋服を隣通しに並べてみました。という感じの作品。あるいは、物書きの女性という中心をから広がる作中の現実世界と、中心を共有する作中の虚構世界、という二重構造。構造に凝る作品は八十年代、九十年代に多かった気がするが、こういう軽めなのは珍しい。そして相変わらず性的描写が淡泊。
 とにかく軽い。だが、その軽さにひたすら惑わされる。気付けば何かを見失っており、その見失っている状況そのものが心地よくなってくる。見知らぬ街をあてもなく、わざとさまようことを楽しんでいるときとおなじような感覚が味わえる短編集だ。…でも、そもそも小説って「見知らぬ街をあてもなく、わざとさまようことを楽しんでいるときとおなじような感覚」を楽しむということが本質なんじゃないのか。まあ、本質がないということも小説の本質なのかもしれないが。

短編を七つ、書いた順

短編を七つ、書いた順

 

片岡義男の作品はこち