本当は『朝露通信』を読みはじめようかと思っていたが、かなり前に買ったこちら、1/4くらい読んだままだったのでまた読みはじめてみた次第。
作品すべてが断片で構成されている。アイデアスケッチのようでもあり、架空の作品の引用のようでもあり。断片と断片の関連性はまったくなく、それぞれが独立しているから、飛ばして読んでもいいのだろうし、途中でやめてもいい。ある程度読んでしまえば、おそらく読後感は変わらない。実験小説と言ってしまえばそれまでだが、実験という言葉に含まれる「開き直り」や「逃げ」の姿勢は、あまり感じられない。むしろ、まともな物語性のある小説よりも正面から小説の本質にぶつかろうとしているように読める。
断片的だから、読書日記を書きにくいのが難点なんだよなあ…。今日は、人の魂と肉体の関係について触れている部分がものすごくおもしろかった。肉体は魂の洋服のようなものだ、なんて話はスピリチュアル系の人たちがよく口にしているが、口にした途端に地に足がつかなくなる感覚でいっぱいになってしまい、純文学だ小説だという雰囲気がまるでなくなってしまいがちだが、保坂さんが書くと、むしろ地に足がつきすぎるというか、魂の身動きが取れなくなってしまいそうな感じすらしてくる。